■飲食店の人手不足の現状とアルバイトの重要性
企業を対象とする日本国内最大手の信用調査会社・帝国データバンクが行なった「人手不足に対する企業の動向調査(2022年7月)」によると、非正社員について「不足」していると回答した企業は28.5%となりました。
非正社員の人手不足割合を業種別にみますと、「飲食店」が73.0%で最も高い割合を示しており、業界全体での深刻な状況がうかがえます。
総務省の「サービス産業動向調査」によりますと、「飲食店」で働いている全従業員のうち、8割以上がアルバイト・パートなどの非正規雇用者であるという結果が出ています。
つまり、飲食店を運営するには、アルバイト・パートの採用が非常に重要であることが理解いただけると思います。
コロナ禍から回復しつつある飲食業界ですが、通常営業に戻りたくても、人手不足によってお店をまわすことができず、閉店に追い込まれるお店も出てきています。
■なぜ飲食店のアルバイト採用は難しいのか
もともと、飲食店のアルバイト採用は、コロナ前から難しいと言われてきました。
応募数が確保できなかったり、店側が欲しいと考える人材と応募者とのミスマッチなど、様々な原因が考えられますが、大きな理由は3つです。
●理由① 給与・待遇に不満
どの仕事もそうですが、2つの似たような仕事があった場合、まず第一の比較対象は給与や待遇で、求職者はより良い方を選択します。
飲食店の場合は、時給はもちろん、シフトの柔軟性、賄いや他店にない独自の制度などのプラス価値がこれに当てはまります。
対人サービス業は、多職種と比べて賃金が低いことも多く、求められる働きと給与が一致していないと考え、辞めてしまうアルバイトも多いようです。
また、飲食店のアルバイトには、学生や主婦、Wワーカーの方たちの応募も多々あります。
こういった方たちには、学生なら学業、主婦なら家庭、Wワーカーなら別の仕事といった主となるものがありますので、シフトの融通が利くかどうかも大事なポイントとなります。
●理由② 研修体制が整っていない
人手不足もあり、新人が入っても研修に充分な時間をさけない場合がほとんどです。
入店後、1時間程度の研修を行なっただけで、すぐにホールへ出されてしまうこともあり、未経験や経験の少ないアルバイトは、不安や不信感から結局すぐに辞めてしまいます。
なかなか研修に時間を割けない場合は、こまめなフォローや声掛けなどで不安を取り除いてあげたり、一緒に切磋琢磨できる同期を作ってあげることが大切です。
スタッフ間の仲間意識を強くし、有効な人間関係を作ることが、長続きさせるための大事なポイントの一つです。
●理由③ 頑張りが認められにくい
個人経営などの小規模な飲食店では、アルバイトの評価制度が設けられていなかったり、曖昧になっていることが多いかと思います。
評価の中で一番分かりやすいのは「昇給/時給アップ」ですが、どうなったら時給が上がるのかをきちんと明示することは、アルバイトのやる気にもつながります。
評価を基準を定め、評価シートを設けるのも一つの方法ではないでしょうか。
その場合、個人的な感情を入れずに客観的に評価をすることが大切です。
また、複数の人間が評価を行なう場合には、全員の基準に差が生まれないよう、すり合わせを忘れないようにしなければいけません。
■まとめ
飲食店の人手不足の理由は様々です。
まずは、「欲しいターゲットの条件(スキル・経験・年齢層など)」をきちんと洗い出しましょう。
そして、本当にその条件が必要か、これだけは絶対に外せないという条件を決めましょう。
次に、その人を採用するために必要な雇用条件を見直しましょう。
学生に昼間のバイトは難しいですし、試験前はシフトが減らせる融通さが必要です。
フルタイムで働けるフリーターが欲しいなら、ひと月暮らせるだけの給与が必要です。
欲しいターゲットを採用するためには、その人になった気持ちで今の雇用条件が適切か考えてみましょう。
また、採用したら終わりではなく、長く続けてもらうためにも、スタッフの働きやすい環境を整える必要があります。
何が人手不足の原因かをきちんと見極め、適切な方法で対処していくことが重要です。
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